万引きをしてしまう子ども

戦後何十数年も経過し、高度経済成長は、日本の社会を物質的に豊かな国にしてきました。
 
子ども達は何不自由なく育てられ、欲しいものは何でも与えられるという生活をし、小学生位になって、高価なものを買うようになってはじめて我慢させられるという生活経験をもつようになりますが、その時はすでに欲求不満に耐える意志が育っていないので、欲しいと思うと人の物でも悪いと解かっていても盗んだり、お店で万引きする子どもが多くなっているのが現実です。
 
ある先生から聞いた話です。
 
ある時小学生が五人で万引きをして見つかり、親達が学校に呼び出されました。
 
その中の二人の親達は「うちの子に限って絶対に万引きなんてしません。家は恵まれていえるし、第一子どもは勉強ができます。万引きするはずがありませんし、する必要もありません」と激しい口調で反論していました。
 
校長先生が、「残念ですが、お宅のお子さんも仲間です」と言うと、
 
「誰が仲間ですか」と言って、その子ども達の名前を聞くと「あの子どもの家は貧しいし、勉強もできないので、あの子ども達がやったんです。家の子どもはきっと側にいただけです。よく調べもしないで親まで呼びださないで下さい」と悪態をついて帰っていきました。
 
勿論子ども達も自分が悪いことをしたという反省など少しもありませんでした。
 
その中で一人の父親は責任感のある人で、子どもが万引きした物を持って、子どもをつれて謝りに出かけました。一軒目、二軒目とも「わざわざ謝罪に来たんですか、たいしたことではないのに」と言われたで、子どもは謝りませんでした。
三軒目の本屋さんに行った時、父親が本屋のご主人にひどく怒られるのを見て、子どもは「お父さんは何も悪いことをしないのにあんなに怒られて、僕は悪いことをした」と良心に目覚め、四軒、五軒目は、二人で謝り、二度と悪いことはしなくなりました。
 
最初のふたりは、その後も万引きを繰返し中学二年生のとき少年院に入る事件を起こしました。
 
親の考え方の誤りが子どもの人生を踏みはずしてしまった一考を要する事件ですね。